過敏性腸症候群 −下痢・便秘で困ったら−

ストレスがかかった時や緊張した時に
急におなかが痛くなったり、下痢になったりしてしまう…

そんな経験はないでしょうか。そんな症状を繰り返すようなら、過敏性腸症候群という治療できる病気かもしれません。20〜40歳代に多く、通勤・通学などに支障をきたすことが多く、生活の質を大きく落としてしまう病気です。

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群とは、レントゲンや内視鏡、便の検査をしてみても、何の異常も見られないのに、腹痛と便秘や下痢などの便通異常が長期間継続する状態です。一般的には、下記の診断基準に当てはまる状態をいいます。注意点として、症状だけで過敏性腸症候群の診断を下すことはできません。診断には、似たような症状を示す他の病気(潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性疾患や腸のポリープ・がん・憩室など)がないことを検査で確認することが必要となります。実際に胃や腸の粘膜に胃潰瘍や潰瘍性大腸炎などの慢性的な炎症や「がん」などがないかどうかの確認を内視鏡検査で行うことによって初めて、診断を下すことが可能となります。

診断基準

過去3カ月の間に1カ月あたり3日以上にわたって腹痛や腹部不快感が繰り返し起こり、下記のうち2項目以上に該当する

  1. 1排便によって症状が改善する
  2. 2発症時に排便頻度の変化がある
  3. 3発症時に便形状(外観)の変化がある

過敏性腸症候群の原因

原因はまだはっきりわかっていません。最近の研究では、腸内細菌や食べ物・ストレスなどがきっかけとなり、一時的に腸の動きがおかしくなり、症状が出るといわれています。さらにこの症状が繰り返すことで、腸が刺激に対して敏感になってしまい、さらに症状が強くなるという悪循環に陥ってしまいます。

 小腸・大腸
内因性 腸内細菌・食べ物 ストレス
外因性 粘膜の炎症など 遺伝など

過敏性腸症候群の症状

過敏性腸症候群には下痢型、便秘型、交代型(便秘と下痢を繰り返す)があり、主な症状として、腹痛にあわせ、各種の便通異常が長期間継続します。腹痛は、便意を伴っていることが多く、排便後に一時的に軽快する傾向を示します。一般的に、食事によって症状が誘発され、睡眠中は症状がないという特徴があります。
その他、腹部膨満感や排ガスが多くなることも比較的みられます。また、さまざまな消化器以外の症状もみられることがあります。

過敏性腸症候群の治療

過敏性腸症候群の治療は、(1)生活習慣の改善、食事指導、(2)薬物療法が基本になります。

1 生活習慣・食事

ストレスの多い生活や睡眠不足、不規則な食生活など修正可能なものがあれば、改善を試みます。アルコールや刺激物(辛い香辛料など)は症状を悪化させるため、出来るだけ摂取は控えたほうがいいとされています。また食物繊維は、便秘または下痢どちらのタイプにも有効です。

2 薬物療法

腸内細菌叢を整える薬や、便秘型や下痢型に合わせ腸管の動きや便の堅さを調整する薬を用います。また腸の過敏性を改善する薬や、ストレスに伴う気持ちの沈みこみ・不安を抑える薬を使うこともあります。

過敏性腸症候群と漢方薬

過敏性腸症候群には、漢方薬も多く使われています。下痢傾向のある過敏性腸症候群には桂枝加芍薬湯と言われる漢方薬が有用な場合があり、便秘傾向がある場合は桂枝加芍薬大黄湯がよく使われています。もちろんおなかの冷えや、体力・胃の調子などを含め、外来にてご相談の上、上記の薬物療法もあわせた処方をしています。

まとめ

症状だけで過敏性腸症候群の診断を下すことはできません。「がん」などの大きな病気が隠れていないかを内視鏡検査で、確認することが非常に重要となってきます。その上で、診断された過敏性腸症候群は多くの方が悩んでいるありふれた病気であり、生命に関わる病気ではありませんが、生活の質に直結します。完治が難しくストレスなどが症状に大きく影響することから、自分の不安を受け入れることが重要となります。実際に、検査の結果で大きな病気がないことがわかるだけでも、安心して症状が改善される方もいらっしゃいます。もしお困りやご相談があれば、お気軽に外来に受診し、ご相談ください。

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