ピロリ菌と胃がん

ヘリコバクター・ピロリ菌について

ピロリ菌は約3×0.5μmの大きさのらせん状をした細菌で、4~8本の鞭毛をもつ細菌です。日本人の感染者は多く全国民の約半数が感染しているとされており、また加齢にともなってピロリ菌保菌者は増えていきます。感染経路は、人から人への経口感染(口から口)や井戸水などの水からの感染がほとんどで、多くが5歳までの幼少時に感染するとされています。

ピロリ菌が胃に感染すると慢性胃炎と呼ばれる持続的な炎症を引き起こし、年齢とともに胃粘膜の萎縮が次第に進み、胃粘膜の炎症が持続して、胃がんの発生リスクが高くなるとされています。また、胃粘膜の萎縮が起こると、胃酸の分泌が減少し、消化不良や胃の不快感などの症状が出現する場合もあります。

実際に、ピロリ菌に感染すると全くピロリ菌に感染したことがない人に比べ、胃がんのリスクは10倍以上であることが報告されています。その為、胃がん発生予防のために、特に若年者(〜60歳台)においては除菌治療をおすすめしております。

ただし、除菌治療によりピロリ菌が消失し胃がんの発生リスクは減少しても、一度進んだ胃粘膜の萎縮は残るため、元々ピロリ菌がいない方に比べると、胃がんの発生頻度が高いことが分かっています。その為、除菌後も胃がんの発生が見られないかどうか1年に1回の定期的な胃内視鏡検査が重要となってきます。

ピロリ菌による慢性胃炎

正常胃粘膜

ピロリ菌検査の保険適用

日本の医療において保険適用でピロリ菌の感染診断・除菌治療(1,2次除菌)が行えるのは、

  1. 1胃・十二指腸潰瘍
  2. 2早期胃がん内視鏡治療後
  3. 3胃MALTリンパ腫
  4. 4特発性血小板減少性紫斑病
  5. 5内視鏡検査において胃炎の確定診断がなされた場合

の上記疾患に当てはまる場合のみ、ピロリ菌の感染診断を行うことができます。さらにピロリ菌陽性と判定された場合は、ピロリ菌関連胃炎に対しても保険診療で除菌治療が行えます。ただし、胃炎の診断は胃内視鏡検査を行った上での判断が義務付けられており、胃内視鏡検査なしでのピロリ菌診断や除菌治療は保険診療では行えません。また、できればピロリ菌除菌前には胃内視鏡検査による萎縮性胃炎などの胃炎の評価・胃内分布などや胃がんの有無を調べておくこと重要と考えています。

ただし、胃がんの原因はピロリ菌だけでなく、塩分の過剰摂取や喫煙、飲酒、食習慣の欧米化とも密接に関連しているとされます。ピロリ菌が陰性であっても、胃がんになる場合はあり、胃内視鏡で治療できる早期の段階で胃がんを発見するためには定期的な内視鏡検査が大変重要です。

内視鏡検査についての詳細は、「内視鏡検査」をご覧ください。

ピロリ菌の除菌について

検査によりピロリ菌の感染が認められた場合、胃酸の分泌を抑える薬と抗菌薬を7日間投与していきます。投薬治療が終了した8週間後に検査を行いますので、忘れずに受診してください。このとき除菌の効果が表れていなければ、お薬の種類を変えて、もう1度行います。

除菌療法の流れ

1.医師の診断

以下の疾患にお心当たりのある方は、医師にご相談ください

  • 胃潰瘍または十二指腸潰瘍
  • 早期胃がん
  • 胃炎
  • 胃MALTリンパ腫瘍
  • 特発性血小板減少性紫斑病

2.ピロリ菌の検査

血液や尿検査に加え、内視鏡で胃腸の組織を直接採取する方法を組み合わせると、より正確な判定が行えます。

3.一次除菌療法

  • ピロリ菌が認められなかった場合
    上述した五つの疾患などを治療していきます。
  • ピロリ菌に感染していた場合
    7日間お薬を飲み続けてください。このとき1日でも服用をやめてしまうと、思っていたような効果が得られません。ぜひご協力ください。お薬が終わったら、当院では8週間以上の日数を空けます。主訴を治療するかどうかは、医師と相談の上で決めていきます。

4.ピロリ菌の検査

5.一次除菌療法

  • ピロリ菌が認められなかった場合
    除菌は成功です。主たる疾患の治療に切り替えていきます。
  • ピロリ菌に感染していた場合
    お薬の種類を変えて、再度チャレンジします。7日間の投与と8週間以上の経過観察は同様です。

6.ピロリ菌の検査

除菌が成功したとしても、胃がんのリスクがゼロになるわけではありません。定期的に内視鏡で検査することをお勧めいたします。

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