「がん」と重複がん

重複がんとは、異なる臓器に異なる「がん」が発生することいいます。一つの癌が他の臓器に転移をする場合(大腸癌の肝転移など)や、同じ臓器にいくつもの癌が出来る多発癌(多発性肝細胞癌)とは、異なる概念です。

重複がんには、それぞれのがんが発生する時期が1年以内の「同時性重複がん」と、1年以上の「異時性重複がん」があります。頻度は研究結果によって差が出ますが、おおよそ同時性重複がんが1-10%くらい、異時性重複がんが1-15%くらいといわれています。

重複がんの誘因として、①危険因子の共通する、②同じ遺伝子の異常が原因となる、の2点があげられます。危険因子の共通するがんには、たとえば喫煙による喉頭がん、咽頭がん、肺がん、食道がん、膀胱がんなどが知られています。また同じ遺伝子異常が原因になる場合では、「腺癌」という同じ癌の種類を発生する胃、大腸、肺などがおこる場合があります。

特に胃がんと大腸がんは重複しやすいがんと知られており、実際に胃がんを指摘された患者様に大腸内視鏡検査を行うと2-5%程度の頻度で大腸がんが発見されることが知られています。

がん治療後の患者様は、どうしてもそのがんの再発・転移に注意を奪われがちです。しかし重複癌の存在も念頭に置き、他の癌の検診もしっかり受けることをお勧めいたします。