ウイルス性胃腸炎(ノロウイルス、ロタウイルスなど)

年末から毎日、 嘔吐・下痢・発熱の患者さんが増えてきています。冬に嘔吐・下痢を起こす病気の代表格がウイルス性胃腸炎です。その原因として有名なのが、ノロウイルスです。胃腸炎症状のかたのなかで、「ノロウイルスかどうか調べてください」「職場から検査するように言われました」とお願いされることがあります。しかし、現状ではノロウイルスかどうか検査することには、ほとんど意味はありませんので、ご説明の上、お断りすることが多いです。その理由をお話しできればと思います。

一番の理由として、ノロウイルスは診断しても「意味がない」&「治療法がない」ことがあげられます。ウイルス性胃腸炎を起こすウイルスには、アデノウイルス、サポウイルス、アストロウイルスなどいくらでもあります。またいずれのウイルス性胃腸炎であっても有効な治療法(インフルエンザのタミフルのようなもの)がなく、周囲の方への感染もします。

ほとんどの胃腸炎は放っておいても1-2日で吐き気・腹痛・発熱・関節痛などは改善します(下痢のみ1週間ほど続く場合があります。)、そのため胃腸炎を治すではなく、脱水状態に陥らないことが大切です。そのためは水分(たとえば、OS-1やスポーツ飲料)飲むことです。いきなりゴクゴクと飲むと吐き気を誘発することがあるので、一口のんだら10-15分休む→一口のんだら10-15分休むを繰り返します。少しずつ飲んで、一晩たつと嘔吐などの症状はかなり改善することが多いです。

第二の理由として、ノロウイルスは遺伝子型がいくつもあり、検査で陽性ならばノロウイルスの可能性が高いですが、陰性の場合でも違うとは言い切れないことです。またそのために、大人になっても免疫ができず、繰り返し感染したり、お子さんから大人にもうつることが多いのです。予防するためには、手洗いをするしかありません。普段から意識して行うようにお願いしています。

以上の理由もあってノロウイルスの検査は3歳未満と高齢者・ハイリスク患者さんにしか保険が利きません。もちろん希望者(仕事上やむを得ない方には)検査をすることも可能でしすが、上記の内容はご了承いただければと思います。